NSKは、自動車トランスミッション(以下T/M)のケースと軸受の間で、稀に発生する摩耗(以下外輪クリープ摩耗)を防ぎ、耐久性と信頼性を向上させた自動車トランスミッション用外輪クリープ防止軸受(名称:クリープレス軸受)を開発しました。
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プレスリリース
2004年07月22日
日本精工株式会社 CSR本部 広報部
NSKは、自動車トランスミッション(以下T/M)のケースと軸受の間で、稀に発生する摩耗(以下外輪クリープ摩耗)を防ぎ、耐久性と信頼性を向上させた自動車トランスミッション用外輪クリープ防止軸受(名称:クリープレス軸受)を開発しました。
近年、自動車に対する低燃費・高出力の要求は益々強くなってきており、T/M用軸受においても、アルミニウム製T/Mケースの熱を含む変形や高速化に対応できる高剛性、高負荷容量、低トルクでかつコンパクトな軸受が求められています。
アルミニウムの採用や薄型軸受の採用にともない、稀にT/M内の軸受嵌め合い面で摩耗損傷が発生する場合があります。これは運転時に軸受外輪がわずかずつ回る外輪クリープと呼ばれる現象によるものであり、この外輪クリープによりT/Mケースと軸受外輪との間に摩耗が生じ、ギアの噛み合いずれによる異音発生、回転不良などT/M不具合の原因となります。そのため、外輪クリープの発生メカニズムの解明とそれに基づいた安価で抜本的な防止対策が求められていました。
そこで、最新の高度解析技術を駆使し、内輪回転とともに外輪に波打ち変形が発生し、その変形が荷重の増加とともに大きくなり、内輪回転と同方向に外輪が回る現象をシミュレート。さらに、外輪クリープ速度や外輪クリープトルクを定量的に測定できる装置を開発し、実験により数値シミュレーション結果を裏付けることで、外輪クリープの発生メカニズムを解明することが出来ました。
さらに外輪クリープに及ぼす軸受内部設計の影響を数値シミュレーションで明らかにすることで、軸受寿命や高剛性、低トルクなどの機能を満足し、かつクリープを防止できる軸受の設計が可能になりました。この新たな設計手法を適用した「クリープレス軸受」は、従来軸受に対し実験室レベルで1/15の摩耗低減を確認しました。クリープ防止設計手法は、その他のタイプの軸受への応用やトランスミッション以外への用途展開も可能です。
以上、「クリープレス軸受」は、高度な数値解析と実験を駆使し外輪クリープ発生メカニズムを解明することにより開発されました。これによって、安価でかつ従来軸受の1/15というクリープ摩耗低減が可能になりました。
NSKは、これまでに開発済みの外輪フランジ付きタイプ、外輪ピン止めタイプ、外輪ローレット加工タイプに「クリープレス軸受」を加えることにより、T/M用軸受の分野でグローバルな拡販を図り、2006年に年間約50億円の売上を目指します。