~ 自動車ATの多段化に貢献 ~
NSKは、自動車のAT(Automatic Transmission)の変速歯車であるプラネタリギヤ(遊星歯車)のピニオンギヤに用いられる超高速ニードルローラ軸受を開発いたしました。ピニオンギヤは、ATには通常数個~10数個使用されており、同軸受は、そのピニオンギヤとシャフトの間の荷重(エンジンからタイヤに伝わる動力によって発生)を支えながら両者を円滑に回転させる役割を持っています。同軸受の運動はシャフト周りの自転運動だけでなく、サンギア周りを回転する公転運動もあるため、軸受内部に高い応力や熱が発生しやすく、軸受の設計には高度な技術を必要とします。
昨今の燃費向上や加速性向上のためにATのギヤ段数は従来の4速から、5速、6速、7速と多段化されてきており、それに伴い、ピニオンギヤ用ニードルローラ軸受に要求される公・自転の最高回転速度も高まっています。5年ほど前まではピニオンギヤ用ニードルローラ軸受はケージ(保持器)を持たない総ローラ(総ころ)形式でしたが、要求回転速度が高まるにつれ、ローラ同士の摩擦を防止するケージを装備したケージ&ローラ形式が徐々に使用されるようになってきました。しかし、更なる高速回転が必要となるとケージ強度が不足*するという問題がでてきたため、NSKでは種々の解析や実験を行ない、ケージの超高速仕様を開発いたしました。
* 軸受ケージに負荷される摩擦熱は公転速度の2乗と自転速度の積に比例するため、回転速度の僅かな上昇も軸受にとっては大きな負担となります
今回開発したプラネタリニードルローラ軸受の特長は、以下の通りです。
- 世界トップクラスの軸受回転速度
- 現行6速ATに採用されているものに比べて公転、自転の最高回転速度を共に20%高くすることができます。今回開発した軸受の回転速度は世界トップクラスのものとなります。
- 保持器の最適化で軸受ケージ内の応力を低減
- 軸受が公転運動と自転運動にさらされると、ローラが等速運動をすることができなくなるため、ケージに大きな応力的負担がかかります。そのため、応力低減のためにケージ構造の見直しや、遠心力そのものを減らすためにケージ&ローラ列数の最適化を行ないました。
- 軸受の超高速回転(公自転)を可能に
- ケージに化成被膜を実施し摩擦熱を半減させました。化成被膜は、鋼製ケージの表面に化学反応により数ミクロンのコーティングを施したもので、その油保持能力により互いに擦れあうケージとギヤの間の直接接触を抑制し、超高速回転を実現します。
NSKでは、今後の要求最高回転数の高いATには本開発軸受を適用し、2007年には全体で15億円規模の売上を見込んでおります。