Press Release

工作機械スピンドル用高信頼性単列円筒ころ軸受技術を開発

~新ころ案内保持器の採用により、スピンドルの生産性と信頼性を向上~

日本精工株式会社(以下、NSK)は、工作機械スピンドル用軸受向けに、組立や慣らし運転時の作業負荷低減と信頼性向上を両立する技術を開発しました。NSKは、2021年1月25日(月)~2月26日(金)に開催される「工作機械部門WEB展示会NSK VIRTUAL EXPO」に本技術を出展します。今後、市場の反響を踏まえながら、2021年度以降早期の量産化を目指します。

工作機械スピンドル用高信頼性単列円筒ころ軸受

開発の背景

マシニングセンタの主要要素であるスピンドルに使用される単列円筒ころ軸受は、グリース潤滑で使用する際、スピンドルを組み立てた後、グリースを最適な位置に最適な量配置するための「慣らし運転」という工程に長い時間を要しており、生産性向上のネックとなっています。また、オイルエア潤滑*1で使用する場合、低速回転時に軸受温度が異常に上昇してしまう課題もありました。これらの問題を解決する手段としては、保持器の位置を安定させるための方法を「ころ案内方式」にすることで可能になりますが、この方式では保持器に過大な力が掛かることがあるため、保持器が破損しやすいという課題があり、これまで「外輪案内方式」が一般的でした。

*1:オイルエア潤滑:微量の潤滑油を混合させた圧縮空気を高速で軸受内部に吹き付ける潤滑方式。

新技術の特長

1. グリース慣らし運転時間の短縮
従来品と同等の耐久性を有した「ころ案内方式」保持器の開発に成功しました。また、保持器形状の改良により、余剰なグリースの排出性を向上させ、グリース潤滑での慣らし運転時間を一般的な「外輪案内方式」に比べ最大約7割短縮しました。
2. オイルエア潤滑での異常昇温を低減
オイルエア潤滑においては、「ころ案内方式」の採用により、従来の「外輪案内方式」の課題であった、低速運転時に軸受内部へ潤滑油が過剰滞留して発生する軸受の異常昇温も低減しました。これにより、オイルエア潤滑でも、スピンドルの安定した運転が可能となります。
3. ころ案内保持器の信頼性向上
ころ案内形式で問題となる保持器の破損を防止するために、保持器の形状および材料を最適化しました。これにより、ころ案内保持器の耐久性(信頼性)向上を実現しました。

開発品の効果

本技術は、グリース潤滑スピンドルの組立時間短縮により、工作機械メーカでの生産性向上に貢献します。また、オイルエア潤滑での異常昇温の低減、ころ案内保持器の強度向上により、運転時の高い信頼性に貢献します。

用途

自動車部品/一般機械部品加工用マシニングセンタなどで使用されるビルトインモータスピンドルでは、スピンドル本体の発熱により、軸方向の膨張が発生するため、スピンドルのリア側に円筒ころ軸受が採用されています。今回、NSKが開発した技術は、このリア側支持用軸受に最適な技術です。

NSKについて

NSKは、1916年に日本で最初の軸受(ベアリング)を生産して以来、100年にわたり軸受や自動車部品、精機製品などのさまざまな革新的な製品・技術を生み出し、世界の産業の発展を支えてきました。1960年代初頭から海外に進出し、現在では30ヶ国に拠点を設け、軸受の分野で世界第3位、また電動パワーステアリング、ボールねじなどにおいても世界をリードしています。

企業理念として、MOTION & CONTROL™を通じて円滑で安全な社会に貢献し、地球環境の保全をめざすとともに、グローバルな活動によって、国を越えた人と人の結びつきを強めることを掲げています。2026年に向けてNSKビジョン2026「あたらしい動きをつくる。」を掲げ、世の中の期待に応える価値を協創し、社会への貢献と企業の発展の両立を目指していきます。