- 新しい潤滑機構の開発により、軸受で必要な潤滑油量を約8割削減。
結果として、給排油ポンプや潤滑油タンク容積の軽量化に貢献。
- 潤滑機構を改善し、給油量を低減したことで、軸受の動力損失を従来比約3割低減。
日本精工株式会社(本社:東京都品川区、代表者:取締役 代表執行役社長・CEO 市井 明俊、以下NSK)は、 eVTOLの航続距離延長に貢献する、「eVTOL(大型ドローン)向けガスタービン発電機用軸受」を開発し、市場に投入しました。
本開発品は、令和5年度 地域復興実用化開発等促進事業の「80kWハイブリッド動力システム」搭載大型ドローン(ガスタービン発電機を搭載した高ペイロード緊急物資輸送用ドローン)のガスタービン発電機に採用され、2月21日に福島県に納入されました。
NSKは本製品の売上として、2030年までに売上10億円を目指します。
開発の背景
近年、新たな交通手段としてeVTOL (電動垂直離着陸機)の開発が進み、その市場規模は2035年に約20兆円にものぼるといわれています。eVTOLの推進機構は、これまで完全電動式が主流でしたが、更なる航続距離延長や運搬能力の向上などのニーズを受けて、高出力・小型軽量なハイブリッド電動式の需要も高まっていくことが予想されています。ハイブリッド電動式の中でも特に、ガスタービン発電機は、バイオ燃料や水素など多種燃料が使用可能であることから、カーボンニュートラルの観点でも、現状では最も現実的な推進機構として有力視されています。
ガスタービン発電機に搭載される軸受には、航続距離延長に貢献する軽量化(例:軸受潤滑油の給排油ポンプやタンクの軽量化)と高速回転性能が求められています。そのため、最小限の潤滑油で、高速回転性能(dmn250万以上)を確保することが市場命題です。
製品の特長
潤滑油の新しい潤滑機構を開発することで、軸受で必要な潤滑油量と、動力損失を削減。結果として、最適・最小量の潤滑油で高速回転性能(dmn250万以上)を確保しました。
- 1). 潤滑油量の削減
-
従来の潤滑機構「ジェット潤滑」に対して1/4に削減。
⇒軸受潤滑油の給排油ポンプ、給油タンクの軽量化
- 2). エネルギーロス(動力損失)を削減
-
従来の潤滑機構「ジェット潤滑」に対して2/3に削減。
- 3). 高速回転性能(dmn250万以上)の確保
製品の技術
- 1). 新しい潤滑機構 概要
-
高速軸受で一般的な潤滑機構である「ジェット潤滑」の課題(潤滑油量が多量・エネルギーロス(動力損失)が大きい)を、より高速回転領域で使用される「アンダーレース潤滑」の給油方法を取り入れることで解消し、潤滑油量と動力損失の削減を実現。
- 2). 既存の潤滑機構の課題
-
「ジェット潤滑」は、給油機構に互換性が高い部品(間座)を使用しており、汎用性とコストの面で優れていますが、軸受外部から高圧・多量の油を強制的に給油するため、潤滑油量が多量で動力損失が大きい、という課題がありました。
反対に、「アンダーレース潤滑」は、シャフト・軸受内輪に専用設計された流路から軸受内部へダイレクトに給油する方式で、汎用性が低く高コストになりますが、必要量(少量)の油を遠心力で給油するため、潤滑油量が少量で動力損失が小さい、という利点がありました。
- 3). 新しい潤滑機構 詳細
-
新しい潤滑機構では軸受内部へダイレクトに給油できる間座形状に改良することで、必要量(少量)の油を遠心力で給油。結果として、高い汎用性と低コストは維持しながら、潤滑油量・エネルギーロス(動力損失)の低減を実現しました。
NSKについて
NSKは、1916年に日本で最初の軸受(ベアリング)を生産して以来、100年以上にわたり軸受や自動車部品、精機製品などのさまざまな革新的な製品・技術を生み出し、世界の産業の発展を支えてきました。1960年代初頭から海外に進出し、現在では約30ヶ国に拠点を設け、軸受の分野で世界第3位、またボールねじ、電動パワーステアリングなどにおいても世界をリードしています。
企業理念として、MOTION & CONTROL™を通じて円滑で安全な社会に貢献し、地球環境の保全をめざすとともに、グローバルな活動によって、国を越えた人と人の結びつきを強めることを掲げています。2026年に向けてNSKビジョン2026「あたらしい動きをつくる。」を掲げ、世の中の期待に応える価値を協創し、社会への貢献と企業の発展の両立を目指していきます。