日本精工株式会社
コーポレート・コミュニケーション部
工作機械向け低フリクションボールねじ「MT-Frix™」を開発
~ボールねじの動摩擦トルクと発熱を大幅に低減、工作機械の精度維持や省エネルギーに貢献~
●NSKの解析技術を用いることで、ボールと溝の接触状態を解明し、最適な内部仕様を開発
●最適な内部仕様により、寸法はそのままに、剛性(変形しにくさ)を維持しながら動摩擦トルクを低減し、大幅な低発熱化を実現
●高い位置決め精度を維持しながら、動摩擦トルクによるCO₂排出量を従来比最大50%削減
日本精工株式会社(本社:東京都品川区、代表者:取締役 代表執行役社長・CEO 市井 明俊、以下NSK)は、低フリクションボールねじ「MT-Frix™」*1を開発しました。NSKの解析技術でボールねじ内部のボールと溝の接触状態を高精度に解明して内部仕様を最適化し、寸法はそのままに、剛性*2を維持しながら動摩擦トルク*3を低減。これにより、大幅な低発熱化を実現し、工作機械の高い位置決め精度を維持すると共に、動摩擦トルクによるCO₂排出量を従来比で最大50%削減しました。
本製品は2024年2024年11月5日(火)~11月10日(日)に開催される「JIMTOF2024 第32回日本国際工作機械見本市」に出展します。2025年4月に受注を開始予定で、本シリーズの売上として2027年に5億円を目指します。
*1 「MT-Frix™」:語源は、MT(Machine Tools(工作機械)の頭文字)+Frix (Frictionを元とした造語)。意味は、「工作機械用途に最適な摩擦特性を持つボールねじ」。
*2 剛性:外部からの荷重に対する変形しにくさのこと
*3 動摩擦トルク:ボールねじを回転させる際に発生する摩擦によるトルク
本開発品
1.開発の背景
ボールねじは、工作機械の直線駆動部に搭載されており、加工工具やワークの位置決めなどを担っています。近年、機械加工の高度化や脱炭素を背景として、ボールねじに対しても、位置決めの高精度化と省エネルギー化のニーズが高まっています。
工作機械におけるボールねじの搭載位置
ボールねじは、駆動時に動摩擦トルクによって発熱し、ねじ軸が熱膨張することで、位置決め精度が低下します。発熱による精度低下を防ぐために強制冷却(発生した熱を付属装置等で冷却)を用いる場合がありますが、冷却装置等の稼働に伴い余分な消費エネルギーが発生します。そのため、高精度化と省エネルギー化の両方を実現するためには、動摩擦トルクそのものを低減することが必要です。
しかし従来の技術では、動摩擦トルクを低減すると、それに伴い剛性も低下しナットが変位しやすくなるため、加工精度が低下する、という課題が発生していました。そのため、剛性は維持したまま、動摩擦トルクを低減する技術が求められています。
2. 開発品の技術
NSKの解析技術で、ボールと溝の接触状態を解明し、最適な内部仕様を開発
⇒ボールねじの寸法はそのままに、剛性を維持しながら動摩擦トルクを低減
3. 開発品の特長
寸法はそのままに、動摩擦トルクと発熱の低減を実現。
1) 動摩擦トルクの低減:剛性は従来同等で、動摩擦トルクを従来比最大50%低減
2) 発熱の低減:動摩擦トルクの低減により、ボールねじ駆動時の発熱(温度上昇値)を従来比最大40%低減
発熱試験の結果(左)と、試験時の温度分布の様子(右)
4. 工作機械へもたらす効果
1)位置決めの高精度維持:発熱の低減により、従来品に対して軸の伸び量を最大40%低減し位置決め精度の低下を軽減
2)省エネルギー:従来品に対して、動摩擦トルクによるCO₂排出量を最大50%削減
動摩擦トルクによるCO2削減効果の試算結果例(当社調べ)
試算条件:
・ボールねじ仕様: 軸径 φ40 mm,リード 10 mm,全長 1400 mm
・使用期間:5年
・平均回転数:400 min-1
・電力CO2排出係数: 0.4641 kg− CO2/kWh (使用時に適用)
■NSKについて
NSKは、1916年に日本で最初の軸受(ベアリング)を生産して以来、100年以上にわたり軸受や自動車部品、精機製品などのさまざまな革新的な製品・技術を生み出し、世界の産業の発展を支えてきました。1960年代初頭から海外に進出し、現在では約30ヶ国に拠点を設け、軸受の分野で世界第3位、またボールねじ、電動パワーステアリングなどにおいても世界をリードしています。
企業理念として、MOTION & CONTROL™を通じて円滑で安全な社会に貢献し、地球環境の保全をめざすとともに、グローバルな活動によって、国を越えた人と人の結びつきを強めることを掲げています。2026年に向けてNSKビジョン2026「あたらしい動きをつくる。」を掲げ、世の中の期待に応える価値を協創し、社会への貢献と企業の発展の両立を目指していきます。