2020年03月30日

ボ-ルねじで、新たな「止める・止まる」をカタチに Part 1 ~戦略編~

NSKは、2018年3月から埼玉工場で、2020年1月からNSKステアリングシステムズ株式会社 総社工場 赤城製造部で、「電動油圧ブレーキシステム用ボールねじ」の生産を開始しました。本製品に関わった各部門の社員のエピソードをご紹介します。今回は、自動車事業本部で、各部門の連携を取りながらプロジェクトの舵を取っていった二人に、NSKが本製品に取り組んだ意義などを聞きました。

「電動油圧ブレーキシステム用ボールねじ」

「電動油圧ブレーキシステム用ボールねじ」

プロフィール

池田 裕之 (写真左)、桑田 秀典 (写真右)

池田 裕之 (写真左)

自動車事業本部 新領域企画室長

桑田 秀典 (写真右)

ステアリング&アクチュエータ本部 主幹

電動化が進むブレーキブースタに着目し、先行投資

池田 NSKの埼玉工場では、2011年頃より自動車の回生協調ブレーキシステム用のボールねじを生産していました。今後の電動ブレーキの需要の伸びを予測して、2014年から本格的にブレーキブースタの電動化に向けた製品のプロジェクトを開始しました。

回生協調ブレーキシステム用低フリクション ボールねじ

桑田 私は、2015年に現在の部署に異動になり、電動ブレーキの市場調査を進めていくと、ボールねじ式の電動ブレーキブースタが有望視されていることがすぐに分かりました。ボールねじは、モータの回転を直動の動きに変えるものです。この動きは、すべりねじ式などほかの形式でもできますが、ボールねじ式は動きが滑らかなため、応答性に優れていることが特徴です。応答性・搭載性・静粛性というボールねじ式の強みを確信した上で、プロジェクトを進めていきました。

池田 製品を受注する前に、肝となる生産設備やプロトタイプの加工ラインを立ち上げました。このような先行投資を会社として決断してくれたからこそ、新たな視点から製品を設計し、大量生産できる新しい工法を開発することができました。このように何年にもわたり取り組んできたことが、競争力のある価格で生産できる体制の構築につながり、最終的な受注につながったのだと思っています。

桑田 今振り返ると、先行投資により、会社の後押しがあったこと、またスピード感を持って新しいことに取り組めたことが良かったと思います。会社として新しいことにチャレンジしようという想いを感じられ、各部門が一丸となってこのプロジェクトをなんとか成功させようというモチベーションにもつながりました。

緊急自動ブレーキの搭載義務化の流れ

桑田 グローバルに運転をアシストする衝突被害軽減ブレーキの搭載の流れが進んでおり、日本では2021年11月以降に国内で販売される新車へ搭載が義務化されます。また、今後、安全面のニーズのさらなる高まりが予想され、これを背景に、ボールねじ式が、複数の形式の中がある中でも2023~2024年には最有力になるだろうと見ています。繰り返しになりますが、ボールねじ式は、応答性に優れているので、障害物を検知してから、ブレーキが利き始めるまでの時間を短くできるため、需要は拡大していくと考えています。

あたらしい動きをつくるNSKとして

池田 自動車業界のCASE*の流れもあり、新しい製品に対する社内の意識も高まってきているように感じます。新しいことを成功させるのはもちろん簡単なことではありません。この製品も、最初に試作品を作った際は、量産するには現実的ではない時間を要してしまいました。しかし、チームで、課題を一つずつ解決して、一歩ずつ前へ進んでいくことができました。この取り組みが会社にとって先行投資の良い事例の一つになり、他の開発品にもポジティブな影響を与えられれば良いと思っています。今後も、新たな製品の芽を探しながら、未来につながる、NSKの「あたらしい動き」を少しでも支えられるものを生み出していきたいと思います。

*CASE:Connected(接続性)、Autonomous(自動運転)、Shared & Services(共有)、Electric(電動化)の変化の総称

池田 裕之
桑田 秀典

桑田 法規制など世間の流れを注視しながら、お客様にとって、社会にとって、絶対に必要なものを見つけ、真摯に取り組んでいく重要性を感じました。時間もかかりましたが、信じて取り組んできたことで、お客様にも受け入れていただけたのだと思っています。今後も社会に貢献できる製品をお客様と一緒に生み出していきたいと思います。技術部門や生産部門が作り上げてきたものの重要性を社外にお伝えしながら、大切に売っていくことが自分の使命だと思っています。