2020年04月13日

ボ-ルねじで、新たな「止める・止まる」をカタチに Part 3 ~モノつくり編~

Part1 ~戦略編~ はこちら

Part2 ~製品設計編~ はこちら

NSKは、2018年3月から埼玉工場で、2020年1月からNSKステアリングシステムズ株式会社 総社工場 赤城製造部で、「電動油圧ブレーキシステム用ボールねじ」の生産を開始しました。本製品に関わった各部門の社員のエピソードをご紹介します。今回は、生産現場で生産ラインの検討から量産まで携わってきた二人に、本製品に込める想いなどを聞きました。

「電動油圧ブレーキシステム用ボールねじ」

「電動油圧ブレーキシステム用ボールねじ」

プロフィール

荻原 孝(写真左)、横山 将司(写真右)

荻原 孝(写真左)

自動車事業本部
ステアリング&アクチュエータ本部長付
アクチュエータ製造チーム 副主務

横山 将司(写真右)

自動車技術総合開発センター
ビークルダイナミクス技術開発部(埼玉駐在)
副主務

前例のないモノをカタチにする難しさ

荻原 私たちは、製品をつくる実行部隊として、生産設備の立ち上げなど生産準備を進めてきました。同時に、お客様へサンプルを納入する必要もあり、試行錯誤しながら、生産準備と並行で進めていく立ち上げまでのスケジュール作成は、私たちにとっても新たな取り組みでした。他部門とも連携しながら、数年かけて取り組み、2018年3月に製品の量産をスタートさせることができました。

横山 私たちのチームは、生産工程や品質保証に関する技術面をサポートしてきました。既存の製品であれば、これまでの生産設備をアレンジして、生産ラインをつくりあげていくことが可能です。しかし、今回は、前例がない新しい製品ですので、基本的に何もないところから、手探り状態で進めていきました。正解が見えない中で、「これで本当に問題ないかな」と不安になることも正直ありました。
一方で、ビークルダイナミクス技術開発部とアクチュエータ製造チームは、これまで、ベアリングでもステアリングでもない、NSKに前例のない自動車向けの製品をカタチにして生産することを多く経験してきました。NSKが世界で初めて実用化に成功したトロイダルCVTもその一つです。そういった文化がベースにあったことから、今回も、皆で前向きに新しい製品をカタチにすることにチャレンジできたと感じています。

トロイダルCVT(無段変速機)

トロイダルCVT(無段変速機)

成功の裏には、これまで培ってきた技術力と、コミュニケーション

荻原 本製品の肝となるのが、新工法の開発です。これには、これまでNSKが培ってきたベアリングやボールねじの技術・生産のノウハウが不可欠でした。たとえば、ベアリングの技術でいえば、製品の小型化・軽量化が求められる中で、サポート用に使われているベアリングとボールねじを一体化させました。この構造をカタチにできたのは、ベアリングとボールねじ両方を生産するメーカーだからこそだと思います。
また、社内のコミュニケーションの面でいえば、製造ラインの設計の段階で、製品を設計する部署と密に意見交換をしながら進めてきたことも、重要なポイントだったと思います。それぞれの役割がある中で、建設的な議論を重ね、皆が同じ目標に向かって進んでいけたことが良かったと思います。

横山 2011年に発表した「回生協調ブレーキシステム用低フリクションボールねじ」も、今回の製品の一つの足掛かりとなりました。「回生協調ブレーキシステム用低フリクションボールねじ」を立ち上げた際の工程設計や設備設計のノウハウが、今回の製品の自動化ラインのベースとなっています。
今回の製品では、多くの工程が自動化されたラインとなっています。人間による作業や判断に頼ることができない分、ミスの許されない信頼性の高い設備をつくらなければなりません。限られた時間・リソースの中で、関係する部門や生産設備メーカーの協力も得ながら、一丸となって考え抜き、取り組んだ結果が今回の製品の量産につながったと感じています。

埼玉工場
赤城製造部

「電動油圧ブレーキシステム用ボールねじ」を生産する埼玉工場(左)と赤城製造部(右)

あたらしい動きをカタチにした好事例として

荻原 まだ始まったばかりで、やっとお客様に製品を出せるようになった段階です。高い品質を維持しつつも、コスト競争力をつけていくために、現状に満足せず、今後も改善を続けていかなくてはならないと思っています。新しい製品をカタチにする経験をさせてもらえることは非常に恵まれていると感じています。
これからも、組織としていつでも新たなものに取り組めるような力を地道につけておくことが重要だと考えています。

荻原 孝

横山 この先、社会環境や価値観、ニーズが大きく変化していく中で、新しいモノつくりにチャレンジしていくことは必要不可欠だと考えています。新しい製品をカタチにして世に出したという事例の一つとして今回の経験を活かし、次のあたらしい動きにつなげられれば良いと思います。グローバルに新しい製品を展開できるように、人材育成にも取り組んでいきたいと考えています。

横山 将司