2022年03月09日

「2022国際ロボット展」開催中!全方向移動ができる「アクティブキャスタ」って何?

NSKは、今日から3月12日(土)まで東京ビッグサイトで開催されている「2022国際ロボット展(iREX2022)」、3月18日(金)までオンラインで開催されている「iREXOnline」に出展中です。NSKビジョン2026で掲げている「あたらしい動きをつくる。」を実現するため、「人・環境へのやさしさをつくる。」をテーマに、産業用ロボットおよびサービスロボット向けの展示を行っています。今回は、この展示会の出展品の一つ、アクティブキャスタについて開発担当者に話を聞きました。

アクティブキャスタ

プロフィール

近藤 大介(写真左)、藤岡 紘(写真右)

近藤 大介(写真左)

新領域商品開発センター 技術開発第一部 副主務

藤岡 紘(写真右)

新領域商品開発センター 技術開発第一部 副主務

新しい機構で、滑らかな全方向移動を可能に

近藤 アクティブキャスタは、サービスロボットやモビリティの駆動用途で使うことを想定したユニットです。東京理科大学の和田研究室と共同で開発しました。サービスロボットというと、身近なところでは、人を案内したり、モノを運んだりするようなものが思い浮かぶかと思います。より円滑で豊かな社会の実現に向け、サービスロボットに対する期待は高まっており、市場の成長が期待されている分野です。
もともと、私たちの部署の開発品の一つに、さまざまな理由でお蔵入りになっていたユニットがあり、「使えそうな技術なのにもったいない」と感じていたことがきっかけとなり、週1回1時間、有志で開発の検討を始めました。サービスロボットが人間の生活空間の中で活かされるには、人との共存と共生が必要です。その一つの要素として、全方向へ移動できることが重要であると考えます。その点、アクティブキャスタは、キャスタを電動化したユニットで、前進後進に加えて、斜めや真横への移動、方向転換を滑らかに行うことができます。

差動機構

藤岡 アクティブキャスタの特長は、大きく二つあります。一つ目は、サイズがコンパクトなことです。通常の方式では、車輪の回転(駆動)と操舵の旋回(ステアリング)を別々のモータで行うので、それぞれのモータに大きな出力が必要となり、モータのサイズが大きくなってしまっています。それに対して、アクティブキャスタは、旋回キャスタを電動化したユニットで、2つのモータの回転差によって、車輪の回転と操舵の旋回の2つの機能を実現しました。この機能にムダのない設計により、小型モータを使用しても、従来品との同等の出力を発揮できます。その結果、駆動と旋回が分かれている一般の構造に比べ、小型のモータを選定でき、アクティブキャスタを搭載するサービスロボットやモビリティそのもののサイズもコンパクトにすることができます。

走行時の振動比較

二つ目の特長は、メカナムホイールなどを使った全方向の移動手段と比べて振動が少ないことです。メカナムホイールは、車輪に凹凸があるため、走行時に上下方向の振動が発生します。一方で、アクティブキャスタの車輪には一般の車輪を使っているので振動が少ないです。さらにキャスタ構造なので、オフィスで使われている椅子のように進みながら方向を変えることができます。これも方向転換時の振動が少ない要因になります。

アクティブキャスタで滑らかに全方向移動が可能に

近藤 アクティブキャスタは、介護分野や図書館など狭い場所や、料理や液体の搬送、人を運ぶモビリティなどさまざまな用途が考えられます。さまざまな用途が考えられるユニットであるからこそ、展示品は抽象度を上げたデザインにしました。「これって卵?」、「いやいや、ペンギンでしょ」、「この動きはこんな場面で使えるのでは?」「うちの〇〇ロボットに使ってみたいな」といったように、来場者のみなさんのさまざまな想像につなげられることを狙いました。ありきたりなデザインでは心に響かないし、奇抜すぎると受け入れられないので、バランスを大切にしました。

人とロボットの共存に活かせる技術開発を

藤岡 このアクティブキャスタは、コンパクトで扱いやすいものを目指して開発を進めました。コンパクト化に寄与している、この差動機構をお風呂で思いついた時は「いける!」と確信しました。この技術は人とロボットが共存する世界にはとても調和していると思います。あらゆる方向に瞬時に方向転換ができ、しかも静かでコンパクト。アクティブキャスタは、ロボットをもっと身近なものにしてくれると信じています。

藤岡 紘
近藤 大介

近藤 私は、「社会に貢献するため」という想いは大前提として、「自分の人生を楽しくするため」にも新しいチャレンジは非常に大切だと考えています。ユーザーや会社の想いに耳を傾けるのはもちろん、自分自身やチームメンバーの内なる声にも耳を澄まして、ポジティブに取り組めるようなプロジェクトを手掛けていきます。今回の展示が誰かの心に届いて、その方とさらなる「あたらしい動き」を生み出していけると嬉しいです。

アクティブキャスタ開発チーム

アクティブキャスタ開発チーム