ベアリングだけじゃない!
既存領域を超えて新領域を開拓、見えてきた市場とは
NSKは1916年に日本で初めてベアリングの開発・製造に成功して以来、ボールねじやリニアガイド、ステアリングなどを開発し、自動車や鉄道、飛行機、工作機械、風車、家電、半導体向けなどへと市場領域を広げながら、社会を支えてきました。更なる成長に向け、「Bearings & Beyond」をテーマに、既存事業領域の枠を超えてNSKのあたらしい可能性を探る開発部隊があります。
プロフィール

尾崎 学士/Satoshi Ozaki
所長
技術開発本部 新領域商品開発センター
社会ニーズを起点にBtoB企業が新たな領域に踏み出す
当社の祖業であるベアリングは歴史も古く、産業的にも成熟しています。近年、自動車のEV化や産業界の自動化などでベアリングの用途が変わってきてはいますが、完全になくなることも爆発的に伸びることもないでしょう。私たちNSKは創業時から引き継いできたフロンティア精神で、新たな領域の可能性を見出すことで、企業のさらなる成長に繋げようとしています。2016年に新領域に特化した開発センターを設立し、プロジェクトが本格スタートました。
これまでの開発は、NSKの強みである4つのコアテクノロジー(トライボロジー、材料技術、解析技術、メカトロ技術)をベースとして、「NSKの技術で何ができるか」という思考やアプローチで開発を進める傾向にありましたが、どうしても発想に限界が出てきてしまいます。そこで新領域に特化した私たちの部隊では、「社会が何を必要としているのか」を起点とし、現場を観察しながら解決策を提案する方法を取り入れています。社内だけでなく、現場で困っている方と直接ディスカッションをして、その中で我々ができそうなことを提案する、というものです。この手法によってこそ、新しい発想も生まれ、新しい価値を生み出すことにつながると考えています。こうした取り組みを始めるなかで、必然的にこれまで当社があまり接点のなかった業界にも視野が広がり、新たな領域の開拓が始まりました。
見えてきたフィールド
ロボット・再生医療・バイオエコノミーで描く未来のビジョン
私たちが新たな領域・新たな市場を探す際のポイントは2つ。ひとつは、ビジネスとしての将来性確認のための市場調査であり、言い換えればそこに強い社会的ニーズが存在するかどうか。そして、もうひとつがNSKの強みや技術を活かせること。この2点です。現在の主な対象はロボット、再生医療、バイオエコノミーの3分野となっています。

ロボット分野は労働人口不足に伴い成長が期待され、従来から産業用ロボット向けなどに製品を提供してきたNSKにとって技術や知識を適用・応用しやすい分野です。再生医療分野では、医療技術の進化に伴い新しい治療方法が研究・開発されていますが、例えば人工臓器の生成などにおける人の手による繊細な作業をNSKのメカトロ技術を用いて自動化することを目指しています。バイオエコノミー分野では、循環型社会の実現に向けて社会的なニーズが拡大する分野ですが、すでに当社メカトロ技術を駆使した未利用バイオマスの資源化を目指し、堆肥製造プラントを開発し販売を開始しています。
現在進行中のプロジェクトは大小あわせると10数件になります。進捗はさまざまで、一部はまだ調査段階のものもありますが、その他多くでは、お客様に試作機を納品し実証・評価いただきながら具体的な対話を始めることができています。


より円滑で安全な生活に向けて
我々が新領域商品開発において最も大切にしていることは、お客様と“本気“で取り組むこと。例えば、「搬送アシストロボットMOOVOTM(ムーボ)」は、我々が湘南鎌倉総合病院の現場に密着し、何度も現場の方とディスカッションを重ね、開発していきました。私たちの開発はお客様にどんな困りごとがあるかを観察するところから始まり、現場の方とディスカッションして彼らにしか見えない問題をしっかりくみ取ります。お互いが本気になって課題解決に向き合うことで真に必要なものが生み出せる。そういった活動を通じて、お客様との強い信頼関係を築き上げ、社会が本当に必要としていることの実現を目指しています。
今後の新領域商品開発では、NSKが蓄積してきた技術や知識を活かし、ユーザーや現場の方々に価値を認めていただける製品を送り出し、事業として育てていきたいと思っています。あらゆる可能性に挑戦し続けることで、これまで接点やご縁が無かったいろいろなフィールドからも必要とされる存在を目指していきたいですね。個々の課題に本気で向き合いつつも、無理やりしがみつかない加減が難しいですが…。いま進めている3つの分野を主軸としながらも、さらなる可能性を開拓し続けたいと思います。我々の新しい取り組みが、多くの人々の生活をより円滑・安全なものにできるよう、今後も積極的にチャレンジしていきたいと考えています。
最後にちょっとだけPR
“超”モノづくり部品大賞で日本力(にっぽんぶらんど)賞を受賞
ロボット分野のプロジェクトの一環として開発した「医療従事者にも患者にも嬉しい搬送アシストロボットMOOVO(ムーボ)」が、「2024年“超”モノづくり部品大賞」において「日本力(にっぽんぶらんど)賞」を受賞しました。

左から新領域商品開発センター所長 尾崎 学士、グループマネジャー 勅使河原 誠一、事業企画本部 担当課長 杉浦 創
MOOVO(ムーボ)ってどんな製品?

「医療従事者にも患者にも嬉しい搬送アシストロボット MOOVO(ムーボ)」は、医療現場での負担軽減を目指し、医療法人徳洲会湘南鎌倉総合病院の協力の下、ストレッチャー搬送の支援のために開発しました。
片手での簡単なリモコン操作のみで、100kgになることもあるストレッチャー搬送をサポートします。シームレスに手動と電動を切り替えることが可能な電動キャスタを搭載しており、今まで通り手動でストレッチャーを動かすこともできるため、既存の搬送ワークフローを変更することなく導入することが可能です。また全方向に対する段差乗り越え性能を持ち、患者視点での乗り心地(振動)や静穏性も兼ね備えています。

写真提供:湘南鎌倉総合病院
[関連記事]
・23年11月 低発塵・除染対応アクチュエータを開発 | 日本精工 (NSK)