気候変動対策

基本的な考え方

◆「つくる」と「つかう」でCO₂排出量の削減を推進

NSKグループは、喫緊の課題である気候変動への対応として、自社の活動のみならず製品のライフサイクル全体に配慮した取り組みを進め、持続可能な社会の実現に貢献しています。
NSKグループは、製品の「つくる」と「つかう」でCO2排出量の削減に取り組み、カーボンニュートラル社会の実現に貢献することを目指しています。製品の性能向上に加え、生産工程における省エネルギーや技術革新、再生可能エネルギーの導入拡大などを進めるとともに、物流やオフィスにおけるCO2排出削減などを強化し、事業活動全体でCO2排出量の最小化を目指します。

  • 本ページでは、生産におけるCO2排出量削減について説明します。製品・サービスを通じたCO2排出量削減への貢献については、環境貢献型製品のページをご覧ください。

環境貢献型製品

TCFD提言に基づく情報開示

基本的な考え方

目標と実績

◆中期経営計画2026(MTP2026)目標と各年度の目標・実績
MTP2026目標2022年度
目標
2022年度
実績
取り組み2023年度
目標
生産・
技術・
オフィス
CO2排出量
2017年度比
50%削減
2017年度比
26.6%削減
2017年度比
43.6%削減

①生産技術革新

  • 生産の超安定化による生産効率の向上
  • 高効率な熱処理設備の導入

②省エネルギー対策・燃料転換

  • エネルギー使用量の見える化
  • 空調設備の燃料転換
  • 高効率コンプレッサーへ更新
  • 工場建屋の屋根に断熱塗装を採用
  • ガスの使用量削減
  • 照明のLED化

③再生可能エネルギーの活用

  • 欧州生産拠点で100%CO2フリー電力に切替
  • 他の国々でもCO2フリー電力への切り替えを加速
  • 中国、日本等で太陽光発電設備の導入拡大

④対策を促進させる仕組み

  • NSKグループ横断型及びグローバル横断型会議体を運営し活動を促進
  • 内部カーボンプライシングの導入検討
  • CO2排出量削減を執行役の短期業績連動報酬の評価項目に組込み、活動を推進
2017年度比
45.0%削減
エネルギー使用原単位
2017年度比
10%削減
2017年度比
5.0%削減
2017年度比
4.9%削減
2017年度比
6.0%削減
物流
(日本)
CO2排出原単位
対前年度比1%削減を継続
2017年度比
4%以下
(2021年度比
-1%)
2017年度比
0.5%
(2021年度比
-4.3%)
  • 積載効率の向上
  • ルート見直しによる輸送距離短縮
  • モーダルシフトの推進
2017年度比
-0.5%以下
(2022年度比
-1%)

※ 温室効果ガス排出量(CO2等価量)は、電気、燃料等の使⽤量にそれぞれ温暖化係数を乗じ合算。温暖化係数については日本は環境省 経済産業省の「温室効果ガス排出量算定・報告マニュアル」記載の係数、日本以外は、電気事業者公開または国際エネルギー機関(IEA)の「CO2 Emissions from Fuel Combustion」記載の係数を使用。

◆CO₂削減目標とその進捗
  • FY2026までに、スコープ1+2のCO2排出量をFY2017比50%削減することを目指す
  • FY2035までに、スコープ1+2でカーボンニュートラル達成を目指す
  • さらに、上流のサプライチェーンを含むスコープ3のCO2排出量の削減に取り組み、グローバル社会が2050年までに目指すCO2排出量ネットゼロに貢献します
CO₂削減目標とその進捗

取り組み

◆つくる取り組み
省エネルギーの取り組み

工場では、空調効率の改善、エネルギー使用量の可視化によるエネルギーマネジメントの高度化、エア使用量の削減などの取り組みを進めています。

  • 空調効率の改善
    工場の空調設備を、ガス式から電気式に切り替えることや、インバータを用いて制御することでエネルギー効率を改善しています。また、工場の屋根に断熱塗装を施すことで、日照や外気温の影響を緩和し、夏冬ともに空調効率を向上させています。さらには、熱処理炉の外壁を断熱塗装することで作業環境の改善を図っています。この取り組みは、火傷のリスクを低減する安全対策としての効果も期待されています。

 取り組み事例

夏季や冬季など、広い工場建屋内の温度を快適に維持するため、空調設備の電力使用量とそれによるCO2排出量が増大します。福島工場では、その抑制のために断熱塗装の施工を進めています。断熱塗装を工場の外壁や内部、屋根に施すことで断熱性高め、外気温や強い日差しなどの影響を緩和し、夏は涼しく冬は暖かく保ちます。塗装には一定の費用が掛かりますが、省エネによる費用削減効果が上回ることを見込んでいます。

福島工場の屋根の断熱塗装

福島工場の屋根の断熱塗装

埼玉県は、日本の各県の中でも地球温暖化対策に積極的で、CO2削減量を2030年度に2013年度比で46%削減することを目指しています。そのため県内の大規模事業所に削減目標を設定し達成に努めることを求めています。NSKの工場の中でもCO排出量が多い埼玉工場は、従来から排出量削減に、積極的に取り組んできました。その取り組みの一つが、空調のエネルギー源のガスから電気への転換です。電気を使う空調設備はガス式に比べて約4倍もエネルギー効率が高いため、設備を切り替えることでCO排出量を少なくすることができます。また、CO2排出量削減の他、メンテナンスの簡略化、安定稼働、水の使用量削減などの効果も期待できます。

工場の大型空調設備は多くの電力を消費します。このため福島工場では、インバータを用いた空調設備の効率改善に取り組んでいます。インバータを導入することで建屋内の気温に応じて空調設備の運転状況をきめ細かくコントロールすることができ、CO2排出量の削減につながります。福島工場には数十機の空調設備があり、一つの空調設備には、送風・排風・循環用に5~6台のモータが使われており、これらをインバータで制御しています。すでに工場の約2/3の空調設備のインバータ制御化を完了し、現在では、湿度と温度をコントロールし不快指数が高まらないようインバータの制御をさらに高度化し、CO2排出量削減と快適な職場環境づくりを行っています。

  • エネルギー使用量の可視化
    ラインや設備ごとの電力使用量と稼働状況をリンクさせることにより、ラインや設備のエネルギー効率をきめ細かく評価し、ムダを発見し、改善に役立てる取り組みを展開しています。また、電力だけでなくガスや圧縮エアの使用量の可視化も進めています。

 取り組み事例

埼玉工場では、生産工程のエネルギー使用量を設備別に、時間帯を区切って変動が一目で分かるなど、生産工程のエネルギー使用量を可視化するダッシュボードと呼ぶデジタルツールを2021年に開発しました。エネルギー使用量のほか、品質データ、設備の稼働状況やトラブルの予兆などの監視にも活用しています。

例えば研削盤では、砥石を回転させるモータや部品を研削加工する際にかけるクーラントのポンプ、部品の搬送装置を動かすエアシリンダーなどがエネルギーを消費しますが、ダッシュボードを用いて分析すると、約40%もエネルギーを多く消費する効率の低い研削盤があることがわかりました。特に古い研削盤は、部品を加工していない時もモータが回り続けるため、不要時に停止させるなど、エネルギー使用状況を可視化したことでムダを減らす対策を加速することができました。さらに、クーラントをかける量を必要十分な量まで減らすことで、ポンプの稼働を抑え省エネルギーにも努めています。

今後、新たに導入する設備にも得られた知見を活かし、さらなるエネルギー使用量削減に結び付けられるよう改善を進めていきます。

生産工程のエネルギー使用量可視化

埼玉工場での生産エネルギーの可視化

工場の生産設備に圧縮エアが使用されていますが、コンプレッサーから設備に圧縮エアを供給する配管や関連機器の経年劣化などにより、どうしても漏れが発生します。エア漏れは、電力を無駄に消費しますが、目に見えず、漏れている箇所や漏れたエアの量の把握は難しい課題でした。

このような中、石部工場では省エネ活動の一つとしてエア漏れ削減に取り組んでいます。エア漏れを可視化する測定機器の活用を開始したところ、今まで発見できなかった小さなエア漏れも数秒で把握でき、エア漏れを検出できた箇所の数はこれまでの2倍、修理による電力削減効果は3倍となり、大きな成果を上げることができました。

エア漏れを検出している様子

石部工場でのエア漏れ検出の様子

技術革新
  • 高周波熱処理の導入
    熱処理工程は、NSKグループ全体のエネルギー使用量の22%を占めます。高周波熱処理は、炉全体ではなく対象の部品のみを加熱するため、スコープ1のエネルギー消費量の大幅な削減に貢献しています。NSK石部工場に導入済みであり、他工場への展開と対象製品の拡大を段階的に進めていきます。
高周波熱処理の導入

この他、デジタル技術の活用など生産の超安定化により、生産性を向上させることで、CO2排出削減を図っていきます。

再エネ活動

再生可能エネルギーの利用が進む欧州では、NSKグループの全生産拠点でCO2フリー電力に100%切り替えを完了し、日本国内でも導入を加速させています。また、太陽光発電設備の導入を、グローバルの生産拠点・事業所で、順次拡大させています。

 取り組み事例

NSKは、再生可能エネルギーの活用によるCO2排出量削減を進めており、なかでも埼玉工場では、約10,000㎡ある野球グランドの跡地に大規模な太陽光発電機を設置し、2023年1月から稼働させています。2,000枚の太陽光発電パネルを敷設し、一般家庭310世帯分に相当する年間1,150MWhの電力を発電し500tのCO2排出量を削減しています。なお、埼玉工場では、購入する電力についても実質的にCO2排出量がゼロとなる再生可能エネルギー由来の電力に切り替え、CO2排出量を削減しています。

太陽光発電機

埼玉工場に設置された太陽光発電機

◆エネルギー使用量、CO₂排出量の推移
エネルギー使用量の推移(グローバル)
エネルギー使用量の推移(グローバル)
温室効果ガス排出量・増減率の推移(グローバル)
温室効果ガス排出量・増減率の推移(グローバル)