資源循環
1.省資源・リサイクル対策
基本的な考え方
NSKグループは、環境にやさしい製品の開発とムダのない生産を通じて循環型社会(サーキュラエコノミー)の実現に向け、サプライチェーンの各段階で3R(リデュース・リユース・リサイクル)のレベルアップを図り、取り組みを推進しています。
開発・設計部門では、製品の軽量化・長寿命化を目指すとともに、最小限の原材料で生産し、使用後にリサイクルしやすい製品開発に努めています。調達部門では、サプライヤーと連携し環境負荷の少ない部品・原材料の調達に努めています。また、スクラップ材を再生して作られた鋼材の調達などを行っています。生産部門では、工程の改善や工具・金型の改良などにより材料歩留りを改善するなど、資源のムダの削減に取り組んでいます。また社内やサプライヤーなどの社外とも協業しながら、生産過程で発生する金属くずや研削くずを再度鋼材にしてもらう取り組みや、水の循環利用、廃液の処理などを進め、廃棄物の排出量の削減とリサイクル率の改善に努めています。物流部門では、梱包・包装の繰り返し使用などにより廃棄物の排出量削減に努めています。
また、各事業所による自主点検や廃棄物の処理を委託している会社の現地確認、情報システムを活用した管理の高度化などにより、コンプライアンス違反がないよう廃棄物の適正処分を徹底しています。
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目標と実績
◆中期経営計画2026(MTP2026)目標と各年度の目標・実績
MTP2026 | 2023年度目標 | 2023年度実績 | 取り組み | 2024年度目標 | |
---|---|---|---|---|---|
生産・ 技術・ オフィス | 廃棄物原単位 2017年度比 -9.0%以下 | 2017年度比 -6.0%以下 | 2017年度比 -19.8% |
| 2017年度比 -7.0%以下 |
リサイクル率 99%以上 | 99%以上 | 99.2% | 99%以上 | ||
生産 | 廃プラスチック原単位(グローバル) 2023年度比 -3.0%以下 | 廃プラスチック原単位(日本) 2022年度比 -1.0%以下 | 2022年度比 0.0% |
| 2023年度比 -1.0%以下 |
物流 (日本) | 梱包資材の廃棄物原単位 2021年度比 -14% | 2021年度比 -6.0% | 2021年度比 -23.3% |
| 2021年度比 -10% |
取り組み
リデュース |
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リユース |
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リサイクル |
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適正処分 |
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◆生産工程での取り組み
材料歩留り※1向上の追求
NSKの代表製品である軸受の大部分は鋼でできており、製造段階で排出されるCO2の約半分を鉄鋼メーカーの鋼材製造時での排出が占めています。鋼材をムダなく活用し省資源を可能とする環境にやさしい製造方法を開発し展開することは、サプライチェーン全体のCO2排出量削減を図る上でも重要課題となっています。
軸受の外輪/内輪を、主に旋削加工※2によって棒鋼から製造した場合、通常、材料の歩留りは50%以下になりますが、製造方法を見直すことで60%以上に高め、鋼材使用量を減らすことができます(下図参照)。これまでNSKは、生産量の多い製品を中心に取り組みを進めてきましたが、現在、適用製品の拡大とさらなる歩留り改善に向けた開発を進めています。また、歩留りを高めることは、製造工程からの鉄くず排出量を減らし、鉄鋼メーカーで新たな鋼材にリサイクルする際のCO2排出量削減にもつながります。NSKは資源の有効活用を通じて、社会全体のカーボンニュートラル、そしてサーキュラーエコノミーの実現に貢献していきます。
歩留まりを改善した製造工程(イメージ)
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※1 工程に投入した原材料の重量に対する完成した部品の重量の比率
※2 鋼材を回転させバイトと呼ばれる工具をあてて目的とする形に削る加工方法
廃液の削減
NSKグループでは、廃棄物の約4割を占める研削工程などから生じる廃液の削減に向けて取り組んでいます。この対策の一環として、廃液を蒸留して濃縮する装置や、液体を短時間で乾燥させる高性能な濃縮・乾燥機の導入を進めています。蒸留によって得られた水の一部は、設備の冷却用として再利用され、資源の有効活用を実現しています。また、濃縮された廃液は、社外で燃料などへリサイクルされています。
瀋陽恩斯克精密機器有限公司では、廃液の蒸発機を導入しました。
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瀋陽恩斯克精密機器有限公司に導入した廃液の蒸発機
研削屑の削減
NSKグループの廃棄物の約4割を占める研削屑の排出量削減とその安定したリサイクルは重要な課題となっています。この課題に対応するため、世界各国の工場でブリケット化設備の導入を進めています。この設備では、研削屑を圧縮して水分を減らし、ブリケットにすることで、重量と容積を減らし、鉄鋼原料としてリサイクル出来ます。
ピータリー工場(イギリス)では、ブリケット化設備を導入し、研削屑の排出量と埋立処分量を削減しました。
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ピータリー工場に導入したブリケット化設備
汚泥の削減
汚泥の削減に向けた対策も進めています。
中国のNSK昆山社では、ろ過機を更新することで、ろ過機で使用する珪藻土(けいそうど)の含油率を減らし、廃棄物の排出量を削減することが出来ました。また、愛克斯精密鋼球(杭州)有限公司では汚泥の脱水機を導入し、汚泥の水分量を減らし、廃棄物の排出量を削減することが出来ました。中国ではいずれも危険廃棄物に分類され、この取り組みにより危険廃棄物の削減が出来ました。
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NSK昆山社で更新したろ過機
廃プラスチックの削減
プラスチックごみによる海の生態系への影響が社会的な問題となっています。NSKグループの廃棄物の中で、廃プラスチックは約1%ですが、廃プラスチック削減の取り組みを進めています。
NSKワーナーでは、プラスチック圧縮機を導入しました。ストレッチフィルム・PPバンド・ビニールを圧縮し、有価物として売却しています。
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NSKワーナーに導入したプラスチック圧縮機
◆物流工程での取り組み
プラスチックコンテナのリサイクル
日本では、長年の繰り返しの使用で傷んだプラスチックコンテナ(通い箱)を、新たな箱の原料としてリサイクルすることで、新しいプラスチック資源の投入量を減らすとともに廃棄物として処分されるプラスチックの量を減らすクローズド・リサイクルを、コンテナ生産会社と連携し行っています。
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プラスチック製パレットの使用拡大
NSKグループでは、お客様へ納入する際に製品を載せて運ぶ物流パレットを、木製からプラスチック製へ変更する取り組みを進めています。
プラスチック製パレットに変更することで、破損が少なく長期間の使用が可能となり、木材使用量を大幅に削減することができます。また、使用時に欠けて破片が出ることがないという利点もあります。
さらに、破損や経年劣化で使用できなくなったパレットも新たな樹脂製品の原料としてリサイクルすることができ、資源循環性にも優れています。
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プラスチック製パレット
木製パレットの再使用
欧州においては、日本からの輸送に使われた木製パレットが欧州規格(ユーロパレット)とサイズが異なるため、再利用ができずに廃棄されていました。そこで、2020年度から木製パレットを日本やアジア・オセアニア地域に返却し、その後、地域間の輸送に再使用する運用を開始しました。
◆各地域での取り組み
米州では、以前は廃棄物として埋立処分していた輸入品の開梱後の梱包資材を、2020年度から業者に売却し、焼却により生じたエネルギーを再利用するサーマルリサイクルを行っています。
◆開発・設計での取り組み
◆調達での取り組み
2.水資源の活用
基本的な考え方
NSKグループの事業所の立地環境や水使用量などを評価した結果、現時点で、水の利用が制限されるリスクは低いと判断しています。しかし、将来的にリスクが高まることを想定し、生産部門における冷却水の循環利用や空冷化、排水浄化による再利用などの対策を進め使用量の削減を図るとともに、排水の適切な処理や汚染事故の防止等の施策により水資源の保全に努めています。
目標と実績
MTP2026 | 2023年度目標 | 2023年度実績 | 取り組み | 2024年度目標 | |
---|---|---|---|---|---|
生産・技術・オフィス | 取水原単位 2017年度比 -9% | 2017年度比 -6%以下 | 2017年度比 -19.5% |
| 2017年度比 -7%以下 |
取り組み
水資源の再利用
AKSプレシジョンボール・インドネシア社では、廃水処理場を新設し、処理水の再利用を実施しています。再利用水は、床拭き水、植物への水やり、冷却塔の水への充填に利用しています。
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AKSプレシジョンボール・インドネシア社に導入した排水処理場
雨水の再生利用
イギリスのニューアーク工場では、雨水を回収し洗面所等の施設で再利用しています。本設備はろ過やUV照射により雨水中のバクテリアや真菌胞子を排除することでクリーンな水を提供し、洗面所などで使用される水の約40%を削減しています。
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ニューアーク工場に導入した雨水回収設備
空調設備の空冷化
埼玉工場では工場の空調設備をガス焚きの吸収式冷温水機から電気式の空冷チラーに更新しました。この更新により大幅にCO2排出量を削減するとともに、水を使用しない空冷式チラーに変えたことにより、吸収式冷温水機で使用していた水が削減され、水の使用量が約5万m3/年(工場年間使用量の約20%)減りました。
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埼玉工場に導入した空冷式チラー
水リスク評価の実施
水は地域的に偏在する資源であり、水不足や水災害の起きやすさは国や地域によって異なります。NSKでは、WRI Aqueduct※を用いグローバル全生産拠点の水リスクの評価を行っています。その結果、インドの1工場について渇水リスクの高い地域に立地していることが判明していますが、2023年度の取水量は14千m3で、これはNSKグループ全体の取水量の0.4%になります。この工場では、特に水の循環利用等の取り組みを推進しています。
※WRI Aqueduct:WRI(World Resources Institute、世界資源研究所)が開発した水リスク評価のグローバルツール。拠点が立地する地域の水リスクを、水量、水質、規制・評判の観点で評価することが可能。