9.2 油潤滑
グリース潤滑に比べ、油潤滑は高速回転に向いており、熱の効果的冷却や潤滑剤の交換が簡易です。そして、軸受の寿命延長が期待できます。
油潤滑方法の種類
油浴法
低・中速回転の場合に多く使用される一般的な潤滑方法です。
油面は原則として、最下位の転動体中心とします。
油浴法の例
滴下給油法
比較的高速回転の小型玉軸受などに多く使用される潤滑方法です。
滴下給油法の例
飛まつ給油法
軸受を直接油に浸さず、周囲にある歯車や回転リングなどの回転によって生じる飛まつで潤滑する方法です。
飛まつ給油法の例
油潤滑方法の種類
(強制)循環給油法
油で軸受部分の冷却を行う必要がある高速回転の使用条件、または周囲が高温の用途に対して、用いられる潤滑方法です。
(a)は油が一定量たまると排油管からタンクに戻ります。(b)は油をためることなく、再び、ポンプやフィルターを通って給油します。(a)(b)ともに、油がハウジング内にたまり過ぎないよう、給油管より排油管を十分に太くします。
循環給油法の例(a)
循環給油法の例(b)
ジェット給油法
高速回転用軸受に多く用いられており、例えば、ジェットエンジンのように、dmn値(転動体ピッチ円径mm✕回転数min-1)が100万を超えるような軸受などの潤滑方法です。
ジェット給油法の例
油潤滑方法の種類
噴霧給油法
(オイルミスト潤滑法)
空気で潤滑油を霧状にして軸受に吹きつける方法です。潤滑油が少量のため、かくはん抵抗が少なく、高速回転軸受に適しているなどの利点があります。
噴霧給油法の例
オイルエア給油法
微量の潤滑油を定量ピストンで間欠的に吐出し、混合器によって圧縮空気中に油を徐々に引き出し、連続的な流れとして給油する方法です。
圧縮空気が常時送り込まれるので、スピンドルの内圧が高く、外部からのごみ や切削液が侵入しにくいなどの特長があります。
オイルエア給油法の例
潤滑方法の比較
◎:優れている、○:良い、△:やや劣る、×:劣る
潤滑方法 | 潤滑の信頼性 | 摩擦 トルク | 温度 上昇 | 高速性 | コスト | |||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
油膜の安定性 | 潤滑剤の寿命 | 耐異物の侵入 | ||||||
グリース潤滑 | △ | △ | × | ◎ | 〇 | 〇 | ◎ | |
油潤滑 | 油浴 | 〇 | 〇 | △ | × | × | × | 〇 |
滴下給油 | △ | 〇 | △ | △ | △ | △ | 〇 | |
飛まつ給油 | △ | 〇 | △ | △ | △ | △ | 〇 | |
強制循環給油 | ◎ | ◎ | ◎ | × | ◎ | 〇 | △ | |
ジェット給油 | ◎ | ◎ | ◎ | × | ◎ | ◎ | × | |
噴霧給油 | △ | ◎ | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | △ | |
オイルエア潤滑 | 〇 | ◎ | ◎ | 〇 | 〇 | ◎ | △ |
油の交換周期
油の交換周期は、使用条件や油量などによって異なります。
- 一般に、運転温度が50℃以下で、ごみの少ない良好な環境下で使用される場合は、1年に1回程度の交換で構いません。
しかし、油温が100℃程度になるような場合は、3か月毎か、それ以内で交換するようにします。 - 水分の浸入がある場合や、油浴潤滑で異物の混入がある場合は、更に交換の周期を短くする必要があります。
銘柄の異なる潤滑油の混合は、グリースの場合と同様、避けなければなりません。