精機製品・産業レポート: ボールねじ クリーン仕様
近年の情報産業の発展はめざましく、半導体や液晶製造設備に使用されるボールねじの数量は急増しています。
これらの製造設備においては、ボールねじの潤滑グリスが飛散し、ウエハ等の製品に付着すると製品価値を喪失するため、低発塵仕様のボールねじが強く望まれてきました。
このような用途に、NSKが新たに開発した低発塵グリス「LG2」を装着したクリーン仕様ボールねじを紹介します。
1. 低発塵
ボールねじからのグリース発塵量
LG2グリースと市販グリースとの発塵量の比較を図3に示す。鉱油-リチウム石けん系Aグリースとエステル・鉱油-リチウム石けん系Eグリースが多量の発塵を示した。フッ素系C、Fグリースは、市販グリースの中では発塵量の少ない方であったが、使用時間の経過とともに発塵量が増加する傾向にあった。それに対し、LG2グリースは時間の経過と共に発塵量が減少した。
また、ボールねじにシールを装着したときと、しないときのLG2グリースの発塵量測定結果を図4に示す。シールを装着することにより、発塵量は1/10以下に減少し、シールによる発塵防止効果が大きい。
2. 動トルク性能
ボールねじの動トルク測定結果
LG2グリースとフッ素系Cグリースの動トルク測定結果を図13に示す。LG2グリースに比べて基油動粘度が約8倍のフッ素系Cグリースは、回転速度の増加と共に、急速に動トルクが増加した。それに対しLG2グリースでは、500rpmまでほとんど動トルクが一定で増加が見られず、安定した動トルク性能を得られた。
3. 高耐久性
ボールねじ耐久試験方法
軸径14mm、リード5mmのボールねじに1.5m (ナット空間容積の50%)のグリースを入れ、回転速度2400rpmで、アキシアル荷重280Nを負荷し、耐久試験を行った。試験後の軸方向のすきまを測定し、摩耗状況を把握した。
ボールねじの耐久試験結果
LG2グリースとフッ素系Cグリースとを封入したボールねじの耐久試験結果を図14に示す。フッ素系Cグリースは、360km走行時点ですでに摩耗が進行しており、12μmもの軸方向すきまを生じた。一方、LG2グリースでは3500km走行後も摩耗した形跡はなく、全く異常は認められなかった。
4. 高防錆性
防錆試験方法
浸炭鋼(SCM420H)の焼き入れ、研削仕上げ表面に約10μmの厚さでグリースを塗布し、相対湿度95%、雰囲気温度70°Cの中に96時間放置した。試験後の錆発生状況を観察した。
防錆試験結果
写真1に示すように、フッ素系Cグリースは、防錆剤配合タイプであるにもかかわらず、表面に多量の赤さびの発生が認められた。一方、LG2グリース塗布ボールねじでは、全くさびの発生が見られなかった。
詳細はこちらへ 低発塵性LG2グリースの実用性能