精機製品・技術レポート:高負荷駆動用ボールねじHTFシリーズ
1. HTFシリーズの特長と技術
1. 超高負荷容量
高荷重用途に特化させた内部仕様により、当社標準シリーズに比べて、定格荷重が大幅に向上しました。
2. 優れた耐久性
超高負荷容量に加えて、ナット内の負荷分布の均一化へ向けての数々の改善(特許申請中)や高荷重用グリースの選定などによって、耐久性が大幅に向上しました。
3. ご使用条件に対応する選定技術
高荷重、小ストロークなどのご使用条件に応じたボールねじの選定や寿命計算などの技術をレベルアップしました。ご提案に基づいて、NSKにて詳細な検討をさせていただきます。
4. 豊富なバリエーション
軸径45~140mm、リード10~25mmの組合せで、34型式を標準仕様としました。
◆精度等級(J1S) : C5, Ct7級
また、高トルクを伝達するための多彩な軸端形状に対応します(キー溝、角型スプライン、インボリュートスプライン、平歯車、etc.)。
標準外の仕様につきましても、NSKにご指示ください。
1.1. 超高負荷容量
高荷重用に特化させた溝形状・寸法と玉径アップによって、定格荷重が大幅に向上しました。
1.2. ナット内の負荷分布の均一化
(1) ナット内で負荷を受ける玉の分布状態は、一般に3次元的にアンバランスのため、負荷分布に不均一が生じる。
→対策[1-1][1-2]: ボール循環路の配列の最適化によって、ナット内の玉の分布を対称に近づけ、負荷分布を均一化しました。
(2) 高荷重になると、ねじ軸・ナットの軸方向伸縮が無視できなくなり、その影響で負荷分布が不均一になる。
→対策[2] : ねじ軸・ナットそれぞれの影響を相殺させるために、ねじ軸・ナットの剛性バランスをとるとともに、両者への荷重作用点を反対側とすることによって、負荷分布を均一化しました。
負荷分布の均一化対策 [1-1]
ボール循環路の位相を180°対向とすることによって、ラジアル荷重のバランスをとりました。
負荷分布の均一化対策 [1-2]
ボール循環路の配列を長手方向に左右対称とすることによって、モーメントのバランスをとりました。
負荷分布の均一化対策 [2]
ねじ軸・ナットヘの荷重作用点を、下図(A)に示すように反対側にすることなどによって、ねじ軸・ナットの軸方向伸縮の影響を相殺させます。
負荷分布の比較計算例(その1)
それぞれの玉が受ける荷重を解析・計算し、ナット中央を原点とした軸方向の玉位置との関係を図示しました。
負荷分布の比較計算例(その2)
サイズダウンの可能性について計算してみました。
2. HTFシリーズの耐久性評価試験結果
◆試料
(ねじ軸径80mm、リード20mm、2.5巻×3列)
TP0:SFT8020-7.5 (従来仕様、標準グリース)
TP1:HTF8020-7.5 (HTF仕様、標準グリース)
TP2:HTF8020-7.5 (HTF仕様、高荷重用グリース)
◆試験条件
- 最大軸方向荷重:289kN
- ストローク:50mm
- 最大接触面圧
従来仕様:2340MPa
HTF仕様:2220MPa
◆負荷条件
◆試験装置
◆試験結果
走行ショット数
- TP0(従来仕様、標準グリース):120万ショットにて寿命
- TP1(HTF仕様、標準グリース):420万ショットにて寿命
- TP2 (HTF仕様、高荷重用グリース) : 1100万ショット、異常無し
◆結論
- HTF仕様は、従来仕様と比較して3倍以上の耐久性が得られております。
- 潤滑剤の適正な選定によって、さらに耐久性を延ばすことが出来ます。
3. 高速化への対応
HTF標準仕様 : dm・N値~70000 (注) dm : ボールピッチ円径(mm)、N : 回転数(rpm)
4. HTFシリーズの用途例
今までは困難であった高負荷領域の電動化を実現しました。
用途例としては、
- 電動射出成形機(射出軸、型締軸など)
- ICモールディングプレス
- パンチプレス
- サーボシリンダ
- ベンディング機、シャーリング機
など。