技術開発

社会が必要とする価値を
目指す姿勢が
次世代自動車のコア技術に
結実していく

自動車技術総合開発センター 新製品開発部
技術開発室 グループマネジャー

自動車の操舵機構を
物理的な位置構成から解放する新技術

私がグループマネジャーを務めるグループが目指しているのは、次世代自動車への搭載が期待されている、ステアバイワイヤ(SbW)の開発です。自動車の運転は、通常はハンドルからつながるシャフトの回転運動を、タイヤを左右に振る動きへ機械的に変換することで進行方向をコントロールします。パワーステアリングは、あくまでもモータもしくはエンジンからの油圧でタイヤを左右に動かすための力を増幅する仕組みです。このように、ハンドルとタイヤが物理的につながっている機構ではなく、ハンドル操作の情報を電気信号に変換し、柔軟に配線できる電線ケーブル(ワイヤ)に通してタイヤを動かす転舵機構に伝えて操舵するのが、SbWと呼ばれる技術です。

この方式は従来のステアリングと比較していろいろなメリットを提供します。ステアリングと前輪の位置関係が自由になり、ステアリングはもちろん、様々な機械部品を自由にレイアウトできます。また、自動運転では、システムがコントロールしているときのドライバーの誤介入を防ぎ、システムが提供する最適な運転制御によって快適な走行と事故等の危険な状態を防ぐことも見込めます。複数の大手自動車部品メーカーによって多種多様なSbW技術が開発・検討されている中で、NSKはこの技術をリードする1社に数えられています。

インタビュー写真01

NSKの技術優位性を評価したVWと
次世代自動車に向けた協業を開始

自社のSbWシステムの市場展開や標準化に向けて、開発を行う各社は自動車の完成車メーカーとの協業を進めています。2019年からNSKもドイツのVolkswagen社とステアリング事業における協業に合意し、製品開発における協業契約を締結しました。Volkswagen社が評価したのは、NSKのコラムタイプEPSの技術と生産に関する膨大なノウハウです。特に、コラムタイプEPSはアシスト用のアクチュエータが車室内にあることから、静音性が求められる製品であり、その設計技術力と世界のベンチマークと言われるVolkswagen社に認められた操舵感の実現で大きなアドバンテージがあるのです。

私のグループには機械系エンジニアや制御・ソフトウエア開発のエンジニアなど、多様な人材が在籍しています。このグループの中で、それぞれの得意分野を生かしながら全員でSbWシステムという製品を開発しています。シミュレーションやリアルな実験を交互に行って製品単体の数値的なデータを取るだけではなく、実際に試作した製品で実験車を仕立て操舵感の評価をする試験も行っています。ドイツに実験車を持ち込んで、SbWシステムを評価したこともありました。その時は、NSKの海外技術部門と一緒に評価を行うことで、新しい知見や彼らの開発に対する姿勢を学び、それを開発に生かすことができました。

自動車産業に向け新たな価値を
提供するために開設した新製品開発部

これまでNSKでは、ステアリングシステムとパワートレインは別々に新規開発が進められていました。しかし、これからの自動運転や電動化といった自動車の進化を見据え、自分たちがそこにどのような価値を提供できるのだろうと考えた際に、製品分野を分けずに一体となって次世代自動車像を描いていく必要があると判断し、自動車技術総合開発センター内に新製品開発部が新たに設けられました。SbWはその注力製品の一つです。

このように、今のNSKには新しい自動車の技術領域に挑戦していこうとする意欲に満ちています。それを後押ししているのが、NSKが100周年を迎えた2016年に策定された『あたらしい動きをつくる。』というNSKビジョン2026です。今年で105周年を迎え、NSKビジョン2026も折り返しのタイミングとなり、その気運が一層高まっています。社員の誰もが、誰かのために、何かのために、価値の提供が可能であることを周囲に訴求できれば、それをすくい上げて実行しようという意志があります。自分の考えが一つの起点になり、共感によって広がってゆき、社会に必要とされる「価値」となっていく。そういった新しい価値創造に向かっていく機会が、ここにはふんだんにあるのです。

インタビュー写真02

社会の共感を得る新技術の開拓に
様々な製品分野からの参加に期待

私たちが挑む価値創出の現場では、自動車業界の技術経験は問われません。自動車業界以外の価値観、開発思想、着眼点、ノウハウを大いに期待しています。実際に、NSKへの転職前に車載インフォテイメントシステムの開発や家電製品の開発を経験していたメンバーもいます。彼らはステアリング製品開発の定石に捉われず、それまでの経験やセンスを生かして活躍しています。家電業界や産業機械、精密機器、IT・通信、素材産業、そしてもちろん自動車・輸送機器関連の技術経験者で、自動車を取り巻く新しい価値の創出に参加したい方は大歓迎です。

今後はいちサプライヤーではなく、我々が完成車メーカーのマインドを持ち、エンドユーザーに提供できる価値を考えて、未来の技術を引き寄せていかなければなりません。今の自動車産業の激動変化を肯定的に受け止めるNSKは、独立系企業ならではの主体性・存在感をますます高めていくはずです。

時がたっても、NSKは軸受製品のトップ企業であり続けているでしょう。一方で、軸受以外にも新領域の高シェア製品をいくつか抱えているはずです。その製品の一つがSbWであることを目指して、私たちは日々の業務に高いモチベーションで挑んでいます。

Message

NSKは多様な人材が活躍し、それぞれのスキルや意見、考えを共有しあいながら成長を感じられる会社です。議論ひとつをとっても、個々が持つ能力をリスペクトしながら本音で向き合えるような環境が整っています。社員はみな、新しいものを世に送り出すために日々努力を重ねています。転職を考えている皆さんも、自分の想いや考えを起点とし、社会に必要とされる「あたらしい価値」をつくり出してみませんか?そんな仲間が増えていき、一緒に切磋琢磨できることをとても楽しみにしております。

※組織、役職名称は取材時のものです。

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