- 産業機械業界の設備保全における「時間基準から状態基準へ」というニーズの高度化に応じ、新たなグリース劣化診断方法を提案
- グリース点検に関するお客様の困りごとの解消と、設備の状態保全への貢献を目指す
日本精工株式会社(本社:東京都品川区、代表者:取締役 代表執行役社長・CEO 市井 明俊、以下NSK)は、グリース劣化診断技術を使ったモバイルアプリの開発を開始します。現場にて高精度・短時間でグリース余寿命を測定できる手法は世界初(*1)です。
NSKは本技術を、2023年11月28日(火)~12月2日(土)に幕張メッセで開催される国際プラスチックフェア「IPF Japan 2023」に出展します。また今後、国内外のお客様へのニーズ調査を反映してモバイルアプリの製作を開始し、2025年度にサービス開始を目指します。
本開発の実現により、グリース点検のコスト(人件費やグリース使用量)などのお客様の困りごとを解消し、設備の状態保全に貢献します。
*1:NSK調べ
開発の背景
- 1) 業界における設備保全のトレンド
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工作機械や鉄道などの幅広い産業機械業界の設備には、軸受や直動製品(ボールねじ、リニアガイドなど)といったグリースを使用した製品が組み込まれています。グリースは製品の使用時間の経過に伴って劣化するため、設備の安定稼働のためには、現場でのグリース点検作業(グリース劣化診断と、その結果に応じたグリース補給)が不可欠です。また、近年では労働人口減少や脱炭素などの時流からオペレーションの最適化・効率化が追及されている中で、設備保全のトレンドは「時間基準」から「状態基準」へのシフトが進み、現場で高精度・短時間で実施できるグリース劣化診断方法が求められています。
- 2) 既存のグリース劣化診断方法
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しかしながら、既存の高精度な診断方法は分析機器を用いた手法に限られており、現場ですぐに測定はできず、そのうえ測定結果が得られるまでの時間が長いことに加え、導入コストがかかるため、普及が進んでいません。結果として、現場で測定できる目視や鉄粉濃度計を用いた手法が一般的に利用されておりますが、精度が低いという課題があります。
- 3) お客様の困りごと(ムダな人件費、グリース使用量)
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現状は、精度の高い診断方法がないため、こまめにグリース点検作業を実施しているのが一般的です。そのため、不要・過剰なグリース点検作業が実施されることもあり、ムダな人件費が発生しています。また、グリース補給についても、本来であれば高精度な診断結果に基づき補給要否を判断するべきですが、現状は安定稼働のため余裕をもって早めにグリース補給する場合が多く、結果としてムダなグリース使用量が発生しています。
NSKは、自社でグリース開発を実施してきた40年以上の歴史があり、その中で、化学的見地からグリースの余寿命を測定する技術を培ってきました。本開発ではこの技術をグリース劣化診断ができるモバイルアプリへ応用します。
本開発の特徴
- ◆現場で高精度・短時間で診断可能なモバイルアプリの開発
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製品内のグリースを少量サンプリングするだけで、グリースの劣化状態の診断が可能。
- ◆グリース劣化診断技術のメカニズム
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- グリースは、基油、増ちょう剤、添加剤から構成されるが、このうち基油および添加剤は、使用時間経過に伴い、熱や酸化による化学変化が発生。
- この化学変化により、色変化にかかわる構造(共役系)が増加し、短波長の光(青色)を吸収。
グリース自体は新品の色である白色から、青色の補色となる黄色~橙色に変化。
その後も使用時間経過に伴い、余寿命がゼロである黒色に至るまで変化する。
- グリース色を数値化し、この色変化過程のどの段階であるかを分析して、余寿命を計算する。
NSKについて
NSKは、1916年に日本で最初の軸受(ベアリング)を生産して以来、100年以上にわたり軸受や自動車部品、精機製品などのさまざまな革新的な製品・技術を生み出し、世界の産業の発展を支えてきました。1960年代初頭から海外に進出し、現在では約30ヶ国に拠点を設け、軸受の分野で世界第3位、また電動パワーステアリング、ボールねじなどにおいても世界をリードしています。
企業理念として、MOTION & CONTROL™を通じて円滑で安全な社会に貢献し、地球環境の保全をめざすとともに、グローバルな活動によって、国を越えた人と人の結びつきを強めることを掲げています。2026年に向けてNSKビジョン2026「あたらしい動きをつくる。」を掲げ、世の中の期待に応える価値を協創し、社会への貢献と企業の発展の両立を目指していきます。