技術開発

製品によってアプローチが
大きく異なる軸受開発
その奥深さに技術者魂が震える

産業機械技術総合センター
E&E軸受技術センター 副主務

毎分15万回転のモータを支える
最新掃除機の軸受開発を担う

回転機構を持った機械製品には、例外なく軸受が使用されています。医療用の器具には約1ミリ径の微小サイズのものが、反対に風力発電用には2000ミリ径にも及ぶ巨大な軸受が使われています。これだけサイズが異なれば、開発思想も材質も製造工程も変わってきます。搭載される製品領域(アプリケーション)が異なれば、軸受の開発上で押さえなければならないポイントが全く異なります。

私が主に担当する家庭用掃除機に使用される軸受も、独特の厳しい要件を満たさなければなりません。それは、指先に乗るサイズでありながら、毎分15万〜16万回転のモータ軸をブレなく支え、なおかつ1000時間を超える使用にも耐えるという、多種多様な軸受の中の究極の一つとも言える性能です。軽量のスティック型が主流となった最近の掃除機は、小型ファンを高速で回転させることで吸引力を確保していることから、軸受に高回転対応が求められるのです。もう一つの担当アプリケーションであるドローンも厳しい条件のクリアが必要です。飛行性能・時間に直結する軽量化に加え、高い信頼性や、悪天候でも使用可能にするために耐水性や耐食性が求められます。

インタビュー写真01

持てる開発技術を駆使してコンペで打ち勝っていく

私の仕事は、顧客の使用条件における軸受の最適仕様の検討や提案、問い合わせ対応といった、受注を引き寄せる営業支援業務と、受注後に顧客から提示された仕様を満たす軸受をつくるための設計業務、現在の標準性能を超えていくための軸受構成部品の新規形状検討や新規材料の選定といった技術開発業務に分けられます。

競合優位性を生み出すのは、技術開発です。近年は他国の軸受メーカーも品質を上げてきており、NSKは技術開発の強化を迫られています。最近の例を言えば、軸受の玉と玉の間を一定に保つ保持器と呼ばれる樹脂部品の形状や材料を検討し、遠心力のかかる高速回転使用下で最適な形状になるように、新たに設計しました。

掃除機の新製品開発に伴う軸受の調達コンペで、NSKは常に声をかけられますが、顧客の要求仕様ギリギリの提案内容では勝ち残れないのは明白です。ターゲットコストの中で、高回転・長寿命を競うことになります。私たちが設計・提案した軸受が、掃除機メーカーの厳格な比較評価を経て採択された時の達成感は、まさに格別です。

社内にヒントを得られる環境があるから
技術者として大きな挑戦ができる

新規の形状や材料を検討し、技術的なアドバンテージを広げていくには、自チームの力だけでは十分ではありません。実際は、社内の基礎研究部門や材料開発部門との密接な連携により成果を得ていますし、提案製品に従来よりも高いスペックを付与できることにつながっています。また、他のアプリケーションの軸受を開発・設計しているチームのメンバーからアドバイスをもらうことで、壁に突き当たっていた技術的な課題を克服できるケースはたくさんあります。軸受開発に関する課題や問題を乗り越えるための解答やヒントは、社内で見つかります。

転職時にNSKを志望した理由も、総合的な技術力の高さに感銘を受けていたからでした。以前は医療機器開発に携わっていたのですが、NSKは相談を投げかけた際の提案の早さと内容において抜きん出ていました。

このように数々の技術の蓄積、さらには新技術の創出力が会社全体に横たわっているからこそ、NSKの開発技術者は今までの水準を超える高い壁に挑戦できると感じています。

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新しいアプリケーションに
挑戦していく喜びがある

これまでに私はNSKで掃除機やドローン、電動工具などを対象とした軸受の開発と設計に取り組んできました。軸受を専門とする技術者として高速回転への対応といった興味深いテーマに挑み、価値のあるスキルを伸ばすことができたと思います。このアプリケーションの中で技術を深掘りしていく未来も有意義でしょう。

一方で、巨大サイズから顕微鏡を使わなければ確認できないような超微小サイズまで、あらゆる領域の軸受をカバーしている総合軸受メーカーのNSKなのですから、いずれは今までとアプローチの仕方が全く異なる新しいアプリケーションにも挑戦したいです。

例えば、微小な軸受はその開発設計にも製造にも、特別な技術が必要になります。小さければ小さいほど公差を狭めていく必要がありますし、部品同士のクリアランスも極少になります。いろいろな条件が小型化に比例して厳しくなるのです。その究極を突き詰めていくのは困難であるとともに、とても面白いはずです。

また一転して、巨大なサイズの軸受開発では荷重に対する強度や故障対応への配慮など、今までの開発者・設計者の考え方を、一度リセットして臨まなければならないような違いがあるでしょう。ここにも新しい刺激がありそうです。

Message

転職を考えられている皆さんには、「何かを変えたい」という想いがあるのではないでしょうか。かく言う私も、不安や葛藤を抱えながらも変化を求め、転職を決意しました。NSKでは全社的に「いまを超える」という考えを大切にしており、私もこれまでの業務で大小様々な変化を経験しました。変化を求める皆さんであれば、このようなNSKの環境において多くの活躍の場が用意されていると思います。独自の視点を活かし、これまでに無い製品や新しい動きを一緒に生み出していけることを楽しみにしています。

※組織、役職名称は取材時のものです。

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